国際バカロレアで見えてきた小学校の英語教育
2回目:小学校の英語教育について
ieNEXT編集部は、国際バカロレアが果たしてきた意義と今後について国際バカロレア大使で東京インターナショナルスクール理事長坪谷・ニュウエル・郁子氏とアオバジャパン ・インターナショナルスクール理事でムサシインターナショナルスクール・トウキョウ理事長の宇野令一郎氏に対談をお願いしました。
その対談から浮かび上がってきたのは、インターナショナルスクールだけではなく、現在の日本が抱える教育課題でした。
全4回連載
1.国際バカロレア200校で見えた「日本の教育課題」は、こちらをご覧ください。
2.国際バカロレアで見えてきた「小学校の英語教育」は、本ページです。
3.国際バカロレアで見えてきた「英語の時間と質」は、こちらをご覧ください。
4.国際バカロレアで見えてきた「大学の国際化と質」は、こちらをご覧ください。
小学校の英語教育について
宇野:小学生の学習は、ふたつトピックがあります。
ひとつは、2020年の学習指導要領が変わって、さきほど話題に少しなりましたアクティブラーニング元年になりました。*1
色々と学習スタイルが変わるということと、もう一つ英語教育が変わりました。
今までは小学校5年、6年生に対して「外国語活動」という形で、「科目」ではなく、英語の活動でした。
その活動が2年前に前倒しされて、小3小4が「活動」で、小5小6はしっかりとした「科目」になっています。
この動きを海外の英語教育と比較すると、坪谷先生は、どのように考えていますか。

坪谷:そうですね。諸外国の第二外国語を説明する前に、3つの言語習得の前提があります。
・習得者の母語が何語であるのか
・習得する言語とその母語がどれくらい親和性があるのか
・母語との親和性で習得までの時間が違う
日本語が母国語の生徒にとって、私たちもそうですけれど、割と短い時間で習得できる言語もあります。
例えば、韓国語がそうなんですね。
一方、英語は、言語として修得が難しい言語のカテゴリーに入っています。
難しいということは、母語である日本語と英語というのはいろんな面で離れている言語なんです。
したがって、日本語母語の生徒が、英語を日常会話程度まで習得するまでに、3,000時間に近いんですね。
いわゆる難しい話はできないけれども、買い物や簡単な文章を読んだり、それくらいのレベルであれば、どれくらい時間がかかっているのかっていうのを平均値を出すと、約3,000時間に近いんですね。
2020年から小学校で英語の授業が始まりました。
坪谷:日本の学校で小中高の間に、何時間生徒がその英語の授業を受けているか、英語で脳に刺激を受けているのかというと約1,000時間なんですね。
英語の言語習得で必要とされるのは、約3,000時間です。
日常会話に達するまでに、約2,000時間足りない。
トータル2,000時間足りないので、小中高の間に英語を学んで「日常会話を話せるようになれ」というのは、ナンセンスな話なんですね。
学校以外で、2,000時間を英語学習の時間が補充する必要がある。
学校教育で足りない英語習得の2,000時間
坪谷:残り2,000時間の英語学習を補充できる子どもは、例えば学校外のところで英語教室やオンラインなどで学習させることができる経済的に余裕のある家庭の子どもです。
経済的に英語習得に必要な残り2,000時間の英語学習をできない家庭の子は、1000時間で終わる。