世界の幼児教育:テ・ファリキ(ニュージーランド)

第3に、テ・ファリキを形作る重要な特徴として、「ラーニング・ストーリー」と呼ばれる各々の子どもの活動記録があります。

これはレッジョ・エミリアのドキュメンテーションと同様、その子どもにかかわる複数の保育者の記録が子ども単位で纏められているものです。

ストーリーと呼ぶ通り、その記述には特徴があり、子どもの日々の遊びを通して学ぶ過程のハイライトを、他の読み手も理解できるよう物語のように記述したエピソード記録となっています。

子どもの行動が客観的に記述され、保育者の主観的感想は入りません。

もう一つ特徴的なこととして、子どもがあることができた、できなかったという達成度を観察するのではなく、長所に目を付けた記述をすることが促されるという点があります。

つまり、レッジョ・エミリアのドキュメンテーションと同様、できた・できないを確認するのに便利な教育手段である所謂「チェックリスト」とは発想が異なるのです。

日々記録されるラーニング・ストーリーは、教育現場でどのように活用されるのでしょうか。

まず、個々の子どもにかかわる複数の保育者同士がこれを共有し、ともに振り返りを行う日々のミーティング(リフレクションミーティング)があります。

ストーリーで記された行動から、今後の指導方針を話しあったり、テ・ファリキのどの要素が育まれたかを確認します。

さらに、この個人別のラーニング・ストーリーが綴じられたポートフォリオは、親にも公開されます。

第4に、テ・ファリキを適用する教育機関だけでなく、親、家族、コミュニティ、文化といった子どもを取り巻くすべてが子どもの成長に影響を与える、という考えがあります。

具体的には親もテ・ファリキを理解することが求められ、そのための冊子も用意されています。

さらに、テ・ファリキにおいては保護者と親は子どもに対する協働の教育者という考えから、親にもラーニング・ストーリーへの記録といった能動的参加が求められます。

以上、テ・ファリキについて紹介しました。

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アオバ&MIST 宇野令一郎
アオバ&MIST 宇野令一郎 ムサシインターナショナルスクール・トウキョウ(旧リトルエンジェルス・インターナショナルスクール)理事長、アオバジャパン・インターナショナルスクール理事、熊本大学大学院教授システム学専攻非常勤講師。カナダ・McGill大学経営大学院(MBA)、熊本大学大学院(教授システム学修士)、慶応義塾大学経済学部卒業。2009年より現在まで、プリスクールからオンライン大学まで9つのスクールの設立や学校再生に関わる。 (株)東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入社後、海外留学等を経て、アジアと国内の投融資事業に従事。2009年よりBBT参画。BBT大学設立準備、初代学部事務局長。2011-2014年、日本eラーニングコンソーシアム理事。2013年よりアオバジャパン・インターナショナルスクール参画。2019年、文部科学省IB教育推進コンソーシアム立ち上げにあたり、発起人。共訳:『学習意欲をデザインする』(北大路書房)、共著:『グローバルに通用する異能を開花する(2015)』「答えのない世界-グローバルリーダーになるための未来への選択(2017)」「自ら人生の舵を取れ(2018)」「21世紀を生き抜く「考える力」(2020)」(ビジネス・ブレークスルー出版)。