連載 バイリンガルへの道 ①留意すべきポイント

バイリンガルへの道 ①留意すべきポイント

「バイリンガル」と流暢に英語を話すインターナショナルスクール卒業生や帰国生をイメージする方も多いと思います。

本記事は、アオバジャパン インターナショナルスクール理事で現在、リトルエンジェルス インターナショナルスクールの理事長の宇野令一郎氏が子どもにバイリンガルになって欲しい、という保護者向けに執筆した記事です。


「バイリンガルへの道」連載は、こちらです。
① 留意すべきポイントは、本ページです。
② メリットと手法とは
③ バイリンガル先進国カナダの事例


インターナショナルスクール、バイリンガルスクールで実際に子どもたちの成長を見続けてきた宇野先生の「バイリンガルへの道」です。

バイリンガル は、子どもの言葉の翼となるか?

この記事を読んでいただいているのは、子どもたちがどのようにしたらバイリンガルになれるか、を考えていると思います。本稿では、バイリンガル子育てのメリットと、留意点を紹介したいと思います。

バイリンガルについて、様々な研究で分かっていることがあります。

メリット
1.異言語や異文化に対し、オープンマインド。
2.他人の気持ちを察する力に優れる。
3.思考の柔軟性、創造力に優れる。

留意点
1.セミリンガル・ダブルリミテッドになる可能性がある
2.アイデンティティ・クライシス
3.日本語と英語が混ぜこぜになる可能性がある

今でもバイリンガル、三つの言語など「マルチリンガル」について多くの学者が調査を続けています。
研究者の論争がある中で、現実に起きていることとして、バイリンガル、マルチリンガルな人数は世界で増えています。実際、バイリンガル人口は世界の43%と言われ、単一言語話者(モノリンガル)の40%より多いのです。

先にバイリンガルに育てるうえでの留意点から紹介します。

デメリットと、その防止法

1つ目の留意点は、「セミリンガル・ダブルリミテッドになる可能性がある」

これは、母語でのコミュニケーション機会が足りない場合に生じえます。

まず、幼児期に100%英語のインターナショナルスクールに通うと、英語は一気に伸びます。幼児期が語学を全く苦労なく修得できる、人生唯一の黄金期である所以です。

母語の発達は、家庭での母語のコミュニケーションが極端に不十分な場合、遅行します。小学校入学前の時点で、英語・母国語とも同年代のそれぞれの母国語話者と比較して遅れるという状況が生じることがありえます。よって、家庭において母国語でのコミュニケーションを意識して十分に行うことが大事なポイントとなります。

バイリンガルになるためには、小学校から親が気をつけるポイントがあります。

小学生レベルではやや戦略的に気を付ける必要があります。

日本人にとっての日本語を例にとります。私の関係するアオバジャパンおよびリトルエンジェルス双方の学校では、週4コマ程度の日本語(国語)の時間を確保しています。リトルエンジェルスでは、日本の小学校の学習指導要領に合わせたスピードで授業を進めます。

これは、日本人としてバイリンガルを維持するための最低線であると思います。外国人の子どもも、幼児期からリトルに在籍する場合は、国語を頑張り漢字を習い、修得していきます。

プリスクールに行くことで、セミリンガルにみられる現象がありますが、ある意味当然です。

・英語は一気に伸びていく
・日本語の発達は(家庭で気を付けない限り)やや遅れる
→結果的に、日本語も英語も、同年代の母国語話者と比べて、6歳前後の時期には「セミリンガル」

幼児・小学校低学年時点では、一時的なものとして特段問題はありません。

言語修得の臨界期仮説(幼少期のある一定期間を超えると、ネイティブスピーカー並に外国語を習得することが非常に困難になるという仮説)である8歳前後時期までは、言語の発達は家庭と学校の適切なサポートにより早期に回復するからです。

むしろ、英語のプリスクールから、日本語環境中心の小学校に戻った場合、日本語力は1学期程度で早期に追いつきますが、英語は一気に落ちていきます。所謂「言語喪失」現象が一気におきます。プリスクールに通わせている保護者が気にして頂くべき論点はむしろこちらかと思います。

言語喪失は別の機会に考えるとして、心配なのはセミリンガル現象が高校卒業時点である場合です。

大人になっても中途半端な状況が生じた場合は、言語は思考力を形作る根幹ですから、思考が深まらない、という心配があります。
また、2つ目のデメリットとして指摘する、アイデンティティクライシスの誘発など、悪影響が生じえます。

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アオバ&リトルエンジェルス 宇野令一郎 リトルエンジェルス・インターナショナルスクール理事長、アオバジャパン・インターナショナルスクール理事、熊本大学大学院教授システム学専攻非常勤講師。カナダ・McGill大学経営大学院(MBA)、熊本大学大学院(教授システム学修士)、慶応義塾大学経済学部卒業。2009年より現在まで、プリスクールからオンライン大学まで9つのスクールの設立や学校再生に関わる。 (株)東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入社後、海外留学等を経て、アジアと国内の投融資事業に従事。2009年よりBBT参画。BBT大学設立準備、初代学部事務局長。2011-2014年、日本eラーニングコンソーシアム理事。2013年よりアオバジャパン・インターナショナルスクール参画。2019年、文部科学省IB教育推進コンソーシアム立ち上げにあたり、発起人。共訳:『学習意欲をデザインする』(北大路書房)、共著:『グローバルに通用する異能を開花する(2015)』「答えのない世界-グローバルリーダーになるための未来への選択(2017)」「自ら人生の舵を取れ(2018)」「21世紀を生き抜く「考える力」(2020)」(ビジネス・ブレークスルー出版)。